印刷博物館にて凸版印刷株式会社の活版製版課OBにお話を伺いました。
日頃から友の会のメンバーはOBに大変お世話になっています。
印刷の技術的な話はもちろんですが、
活版印刷が商業印刷のメインだった頃のお話も大変面白く、
いつかじっくり聞きたいとずっと思っていました。
商業印刷はスピードや正確さが重要。
友の会が作る活版印刷の”作品”とは随分違います。
大きな会社ですから作業品目も週刊誌、月刊誌、教科書、カタログ、文庫などさまざま。
週刊誌のように朝入稿したら午後には校正刷りを出すものもあれば、
10年がかりで作る辞書もあり(版は全て取っておくそう!)。
仕事は文撰、校正、差換、和文植字、欧文植字と分業制。
仕切りなしの広い空間で、
100名近い人たちが黙々と仕事をする当時の様子に思いを馳せました。
お話を伺ったOBの担当は欧文植字。
1年目は活字のネッキを一日中触ることで親指に穴が開いてしまうことが辛かったそうです。
それでも遅くとも入社半年後には一人前となり、
2年目には組版指示書を書けるようになり、
和欧混植の数式が組めるようになるには10年ほどかかるそう。
他にも品目ごとのスケジュールやエピソードなど、
秘話も含めてたくさんお伺いすることができました。
OBは「自分がこの場に居るのは活版印刷のおかげなのだから、
こうして話をすることで少しでも恩返しが出来たら嬉しい」とおっしゃっていました。
我々もOBの想いと技術を受け取って、
作品づくりや活版印刷伝承に繋いでいきたいという思いを新たにしました。
欧文植字の3種の神器は倍尺(ばいさし)、ステッキ、ピンセット。